太宰治の『人間失格』。
この大ベストセラー小説の誕生秘話を描いた映画が
『人間失格 太宰治と2人の女たち』。
見てきました、映画館で。
文才のカケラもない、ただのアラサー主婦による感想なので、
ブロガー失格!
なんて言わず、お付き合いくださいね。
※公式ホームページやCM、太宰治の年表を見れば分かる程度のネタバレはあります。
この記事を流し読み
映画館で見るべき映画の1つ
蜷川実花さんが監督なんでね、映像美をぞんぶんに楽しむためには、やはり映画館に足を運んで正解でした。
画像:公式ホームページ
この静止画を見るだけで、蜷川さんの作品だって分かりますよね。
3人の女たちに、それぞれモチーフの色があることもこの作品の特長です、ぜひ注目してくださいね。
二階堂ふみさん演じる「富栄」は、さくらんぼやカニなど、やたら赤い食べ物を選んでいましたよ。
太宰治の半生は、女性関係や自殺未遂、そして結核など、心身共に病的な一面があるので、本来なら「苦しい」って思うシーンもたくさんあります。
が。
しかし。
蜷川実花さんの世界観のおかげで、ちょっと現実感がなくなったり、ストーリーよりも映像美に気持ちが傾いたりして、後味良く楽したのがありがたい。
何かを生み出すことの苦悩
3人の女性との話がメインではありますが、太宰治の苦しそうな生き方を見る限り
小説を書くってめちゃめちゃ大変やん!
何かを生み出すって、苦悩の連続やん!
と、1人の小説家に対する敬意がわく映画でした。
苦しんで苦しんで、もがいてもがいて、しぼりだして。
価値を生み出すって、大変。
テレビもyoutubeもインスタグラムもなかった時代。
個人が表現し、それが広まり、承認される。
そんなツールとして、小説は大きい役割をになっていたとは思いますが、ストーリー、言葉、文章を生み出していく工程がハイレベルすぎ。
私は好きでブログを書いているわけですが、文章を生み出してるとは言え
あとからナンクセつけるただの批評家
なんだなって痛感させられました。
(この映画レビューだって、生み出されたものに対して、とやかく言ってるだけですからね。)
ちなみに、このセリフは怪盗キッドがコナンに向けて探偵をディスったセリフ。
コナンと言えば、ルパンとコラボした映画もありますが、ルパンの実写版は小栗旬さんが演じていましたよね。
画像:公式ホームページ
今回の太宰治とは別人。
軽やかで、クールで、不二子に振りまわされ、愛されるキャラ。
こんなにサル感あった小栗ルパンが、なんと今回太宰治。
画像:公式ホームページ
俳優さんもまた、生み出す側の人間なんだなと痛感させられました。
舞台あいさつで、小栗旬さんはベッドシーンの経験があまりなく、エリカ様のお胸を触れなかったなんて秘話が明かされていましたが。
エリカ様に「もっとこいよ!って思っていました」なんて言われ、たじたじしながら笑う小栗さん。
1つの役を生み出すのも、一筋縄ではいかないようです。
生妻、津島美知子(宮沢りえ)がたくましすぎる
画像:公式ホームページ
宮沢りえさんが演じるのは、太宰治の妻「津島美智子」。
お酒にタバコに女に、さんざんな太宰治の才能を信じ、支え続けた3児の母でもあります。
もうね。
一児の母としてね、1人の妻としてね、もっとも感情移入してしまった役でした。
食洗機もドラム式洗濯乾燥機もない時代でね、ワンオペ3人育児ですよ。
テレビもyoutubeもなし。
太宰治の身なりを整えたり、書籍の印押しをするシーンもあったけどね、
そんな中ワンオペ絶対きつい。
昭和を生き抜く女性、たくましすぎる。
映画は実話をもとにしたフィクションではありますが、美知子さんは実在した人物。
夫である太宰治が別の女性(富栄)と入水自殺し、未亡人になったのは今から約70年前。
映画の舞台もだいたい70年前ということになるので、昔の話のように感じますが、美知子さんは長寿でした。
亡くなったのは85歳。
私が小学生の時まで生きていらっしゃったのですね。
美知子さんの次女、津島祐子さんにいたっては、2016年までご存命なので、ほんとつい最近の話。
私はそんな最近の世界を、全然知らなかったんですね。
「太宰治」と言えば、なんとなく
あ~、知ってる知ってる。人間失格とか走れメロスの人でしょ?
読んだ読んだ。知ってる。
なんて知っている気でいましたが、養老孟子さんに
それがバカの壁ですよ
なんて言われてしまいそうです。
太宰治も波瀾万丈でしたが、夫不在の中、家事・育児をこなす美知子さん。
夫だけでなく、長安の正樹くん(15才)にも先立たれ(映画では触れていませんでしたが)、悲しみは深かったでしょう。
2歳児のイヤイヤ期がやばい~、ぐずりがしんどい~。
掃除機かけるのめんどくさい~。
なんて、しばらく口にしない!とアラサー主婦に思わせる、そんな役でした。
2人の愛人、静子(沢尻エリカ)と富栄(二階堂ふみ)について
画像:公式ホームページ
太宰治との子どもを1人産んだ愛人、静子(沢尻エリカ)。
画像:公式ホームページ
太宰治と入水自殺をした富栄(二階堂ふみ)。
正妻である美知子に肩入れしてストーリーを追ってしまうと、
人の旦那と寝やがって、このやろう!
なんて思いたくもなりますが。
静子は静子で、生後1カ月の娘を失くし、その後に離婚。
富栄は旦那に先立たれ、未亡人。
2人とも、辛い過去を持っていることを考えると、なんだかこの愛人たちも切ない。
この2人は、恋愛に対して求めていることが違うので、その部分は同じ女性として興味深かったとも思います。
愛ってなに?
恋ってなに?
という疑問について、具体的な一種の答えを垣間見たい人は、この3人の恋愛模様は参考になるかと。
エリカ様×蜷川実花監督といえば「ヘルタースケルター」ですが。
画像:https://www.asmik-ace.co.jp/lineup/2147
蜷川実花さんの華やかな色調の演出を見ていると、
お上品なりりこ様、到来!?
と時々感じてしまいました。
(りりこ:ヘルタースケルターで沢尻エリカさんが演じた役)
映画内でどんどん落ちていくりりことは違い、静子はもういろいろ割り切って、そしてちゃっかりしてて。
そんな、「あ、ちょっとこんな性格も、なんか羨ましいな」と思わせる愛人、静子でした。
二階堂ふみさん演じる富栄については、
あかんあかん、そうなったらあかん
という人物です。
男も自分もどんどん沼にハマっていくタイプの恋愛。
まぁね、一緒に地獄に落ちたいって思えるくらいの恋愛、一生に一度くらいはしてみてもいいかもしれませんが。
本当に地獄にいっちゃだめでしょ。
映画を観ていると、だんだん
あれ、二階堂ふみさんってこんな本当にこんな病んでる危ない女なんじゃないか・・・?
と疑念がわくのですが、そのたびに「scoop!」のウブな野火(のび)を思い出すようにしました。
画像:公式ホームページ
とは言ってもね、蜷川実花マジックです。
病んだやばい女性像も、なんか知らんが芸術的に仕上がっています。
ベッドシーンはしっかりお胸の露出もあるので、役者魂に頭が上がりません。
文学に興味なくても楽しめるエンターテインメントだった
私はとある土曜日の、田舎のイオンモールの映画館で見てきたのですが
全然、人がいませんでした。
ほらもう、悲しいくらいに貸し切り。
時間ギリギリに3人くらい来たけど。
公開翌日ですよ。翌日。
2019年9月13日公開で、14日に見に来たんですよ。
いくら田舎とはいえ、11時台という映画館に来やすい時間帯、この人数は少なすぎる。
みんな、もしかして、お堅い映画だと思って躊躇してる???
実写版ライオンキングの方が気楽に観れると思ってる????
いやいや。
蜷川実花監督の『人間失格』は、一種のエンターテインメントです。
芸術です。
美術館に来たかのように、写真展に来たかのように。
あれ?どこまでが実写なの!?なんて時々ふわふわしながら楽しめるエンターテインメントです。
構想7年。
正妻である美知子さんの次女、津島祐子さんが2016年に亡くなる前から制作がはじまっていた、超傑作。
実際に昭和を生きた人たちに敬意を払いながらも、ぜひたくさんの人に映像美を映画館で楽しんでもらいたい作品でした。
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